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石けんの個性

石けんの個性を決めるのは、主に使われている油脂と添加物です。油脂の種類と添加物の種類の組み合わせによりいろいろな使用感の石けんを作ることができます。購入前に油脂と添加物をチェックすれば、買ってから「思ってた感じと違う」ということを少なくすることができます。
ここでは、しっとり感さっぱり感を中心に、石けんの個性を決める要素について書き留めたいと思います。

油脂

石けんを選ぶ時、しっとりするか、さっぱりするか、を大切なポイントとしている人は多いでしょう。でも、店頭に並ぶ石けんのしっとり感、さっぱり感はどこで見分けたらいいのでしょうか。
売り場で実際に使ってみることはできませんが、石けんが包まれているパッケージに見分けるヒントがあります。手に取った石けんを裏返して「原材料」を見てみてください。そこに書かれている油脂の名前から、ある程度石けんの個性を見分けることができます。一言に「油脂」と言っても、その中には

しっとりした石けんになる油脂
もあれば、
さっぱりした石けんになる油脂
もあるのです。
それぞれの油脂を石けんにした時の使用感を、私が感じた範囲内で表にまとめてみました。

石けんに使われる油脂と個人的な使用感
油脂名しっとり or さっぱり個人的な感想 (すべての人に当てはまるわけではありません)
しっとりさっぱり
アボカドオイル 肌への刺激のなさは感じる。しっとり感は期待したよりも小さい、という印象。
オリーブオイルしっとりすることで有名ですが、オリーブオイル高配合の石けんは脱脂力が強いように感じます。60%位までの配合率ならしっとり感を実感できました。100%でもしっとり感があるという人もいますが、私には脱脂力がきつすぎるようです。感じ方にかなり個人差がある油脂だと思います。
牛脂 同じほ乳類の脂のせいか肌になじむしっとり感。泡がきめ細かく、クリーミー。同じ配合率の時、ラードよりも硬さのある石けんになります。
グレープシードオイル 洗い上がり、肌がきゅっきゅっという感じがする。一日に何度も使うと、真夏でも肌がかさつきました。その一方で、一日一回の使用だったら、乾燥した時期でもかさつきを感じることもなく問題ない使用感。酸化しやすいオイルです。
ココアバター(カカオバター)++ 高配合の石けんは強いしっとり感があり、硬い石けんにする力もある。乾燥の強い時期には重宝します。逆に夏はしっとり感が強すぎて、さっぱり感は得られません。
ココナッツオイル ++石けんの泡立ちには欠かせないオイルですが、高配合にすると皮脂を根こそぎ取られる感じがします。乾燥した時期に100%配合の石けんを使ったら、肌がガサガサになりました。
米油・米ぬか油 洗い上がり、肌がきゅっきゅっという感じがして、さっぱり感があります。夏用の石けんに使うことが多いですが、乾燥した時期に使っても軽いしっとり感がありました。
シアバター ココアバターほどの強い保湿感はありませんが、他の液体状のオイルと比べると強めのしっとり感。
椿油オリーブオイルと似ている脂肪酸構成のせいか、高配合は脱脂力が強く感じますが、配合率が抑えられている石けんはしっとり感が得られます。
菜種油 オリーブオイル程度のしっとり感はあるけど、脱脂力はあまり強くない気がします。石けんになるのに時間がかかり、石けんになった後も酸化が早いので、特に好んで使われることは少ないようです。
パームオイル 肌への効能よりも、泡持ちを良くする目的と、石けんを硬くする目的で配合されることが多いですが、しっとり感のある油脂です。
パーム核オイル ++石けんの泡立ち目的で配合されることが多い油脂です。高配合にすると皮脂を根こそぎ取られる感じ。ココナッツオイルと似た性質を持っているが、一般にココナッツオイルより刺激が少ないと言われているため、刺激を抑えた石けんを作る時にココナッツオイルの代わりに使われることがある。
ひまし油 ココナッツオイルもしくはパーム核オイルと一緒に配合すると、ブクブクと軽く大きな泡だちが期待できる。しっとり感もある。
ホホバオイル 石けんのベースオイルとして使われるよりも添加物(スーパーファット)として使われることが多い。配合される量によっては、しっとり感というよりも、肌に膜が張ったように感じるので、好き嫌いがはっきり分かれるようです。
マカダミアナッツオイル 肌自身の力でしっとりしているような、自然な感じのしっとり感です。オリーブオイルのように高配合の石けんでは脱脂力が強すぎることがなく、しっとり感が保たれている。
みつろう++ 保湿感というよりも、肌に一枚膜が張ったような感じがするので、好き嫌いがハッキリと分かれるようです。肌の水分を守る力は強いと思います。
ラード 牛脂同様、同じほ乳類の脂のせいか嫌みのないしっとり感。泡だちもモコモコで、しっかりとした硬さの石けんになります。最近は動物油脂が敬遠される傾向にありますが、石けんの油脂として優秀だと思います。
レッドパームオイル しっとり感が得られる油脂です。パームオイルの一種ですが、パームオイルほどは石けんを硬くすることはできない。
ローズヒップオイル しっとり感はあります。でも、その効果が実感できるほどの量を石けんのベースオイルに使うのはもったいないと思います。
油脂名しっとりさっぱり個人的な感想 (すべての人に当てはまるわけではありません)

+印のないものは「どちらとも言えない」
両方に+印のあるものは「配合によって使用感が変わる」

油脂の個性には、しっとりさっぱりといった使用感だけではなく、泡立ちを良くする、泡持ちを良くする、硬い石けんにする、などいろいろあります。
実際に商品として売られているせっけんには、一種類の油脂だけで作られたもの、複数の油脂を配合して作られたものがあります。
複数の油脂から作られたものは、それぞれの油脂のいいところが引き出されるような配合を工夫して作られています。例えば、ココナッツオイル、ラード、オリーブオイルが配合されている場合、ココナッツオイルで泡立ちを良くし、ラードで泡持ちを良くしつつ固い石けんにし、オリーブオイルでしっとり感を出す、というように、それぞれ役割を持っています。なので、「ココナッツオイル、ラード、オリーブオイル」の配合を見て「ココナッツオイルが入っているからさっぱりした石けんだ」とは一概には言えません。
また、個人差により合う油脂、合わない油脂もあり、私個人の例を挙げると保湿力があるといわれているオリーブオイルが高配合の石けんを使うと、皮脂が落ちすぎてガサガサになってしまいます。でも、低配合であればオリーブオイルの良さは実感できるので、個人的には複数の油脂が配合された石けんの方が、肌への使用感も使い勝手もいいものが多いと感じています。
もちろん、一種類の油脂だけで作られたいい石けんもたくさんあります。大切なのは、

自分の肌に負担無く、汚れを落とすことのできる石けん
かどうか、という点です。

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添加物(オプション)

石けんの原材料表示に、油脂、アルカリ(水酸化ナトリウム)、水以外のものが書かれていることがあります。石けんは油脂、アルカリ(水酸化ナトリウム)、水があればできるので、それ以外のものは添加物(オプション)になります。ほとんどの市販の石けんの添加物は、炭やはちみつなど、私たちの生活の中にも身近に存在するものばかりです。

これらの添加物にもそれぞれ個性があり、その個性がそのまま石けんの個性になります。

中には洗浄成分は石けんで、添加物にエデト酸塩などの合成化学物質を使用している石けんもありますが、ここでは合成化学物質については省きます。

石けんに使われる添加物と個人的な使用感
添加物代表的なものしっとり or さっぱり個人的な感想 (すべての人に当てはまるわけではありません)
しっとりさっぱり
あずきさらしあん あずきには、天然の洗浄成分であるサポニンが含まれているため、さっぱり感が得られます。
アルコール日本酒、ワイン アルコールには糖分が含まれるので、しっとりとした使用感。
アロエ   しっとりというよりも、肌に穏やかという感じ。アロエを食器洗いの石けんに配合したら手が荒れませんでした。
カカオカカオマス
ココアバター
  肌への効果を期待して配合されることはありません。着色目的がほとんどです。
クレイカオリン
モンモリロナイト
 ++クレイが皮脂を吸着することで、強力なさっぱり感が得られます。クレイの種類や色によって強弱があり、一般に、白<暖色<寒色の順で皮脂の吸着力が強くなる。
ココナッツミルク  牛乳や山羊乳のように保湿力があるが、しっとり感は脂肪分の多さに比例します。
米ぬか  米ぬかのつぶつぶには穏やかなスクラブ効果があり、米ぬかに含まれるオリザノールには保湿効果がある。
シルクシルクパウダー
シルクファイバー
セシリン
  保湿感よりも、洗い上がりのつるつる感が実感できる。特にシャンプー石けんに配合するとつるつるの感触に。タンパク質の一種なので合わない人もいるようです。
  ++強力なさっぱり感。皮脂が全部なくなる感じ。
精油ラベンダー
オレンジ、レモン
  香り付けの目的で加えられる。精油にはいろいろな効能があるが、肌への効果が期待できるほどの量が石けんに加えられることはほとんどないようです。(鼻から吸収した香りから得られる効能は期待できます。)
ドライハーブカモミール
カレンデュラ
  ハーブをそのまま用いる場合はいろいろな効能が期待できますが、石けんに加えるとアルカリに負けてしまう成分もあります。中にはマイルドな使用感が得られるハーブもあります。
はちみつ ++ 保湿力があるのでしっとりとした使い心地が得られる。クリームのようにきめが細かく、しっかりとした泡が立つ。殺菌力は石けんに加えられる程度の量ではあまり期待できない。
ミルク牛乳、山羊乳
 液体、パウダーで加える方法がありますが、どちらもしっとり感は脂肪分の多さに比例します。
油脂ホホバオイル++ 石けんに添加物として油脂を加えると、肌にまんべんなく薄く油脂を塗ったような感じがします。オイルの種類によっても使用感に差が出ると思います。
油脂を石けん生地に加えることを、「スーパーファット」と呼び、「スーパーファットの石けん」と言えば、保湿目的で、ベースオイルとは別に油脂を加えた石けんを指すこともあります。
ヨーグルト  ++ヨーグルトに含まれるフルーツ酸のピーリング効果によるさっぱり感、さらさら感がある。
添加物代表的なものしっとりさっぱり個人的な感想 (すべての人に当てはまるわけではありません)

+印のないものは「どちらとも言えない」

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作り方

石けんができる「鹸化(けんか)」という反応は、油脂とアルカリの単純な化学反応ですが、この鹸化反応を起こして最終的に石けんが作られるにはいろいろな方法があります。
油脂は脂肪酸とグリセリンが結合したエステルの混合物なので、鹸化反応の結果、保湿成分であるグリセリンが生成されます。(詳しくは「油脂が石けんに化ける反応 - 水酸化ナトリウムと油脂の結合」へ)

どのくらいの量のグリセリンが石けんに残っているかによって石けんの使用感が変わってきます。

手作業で作られている石けんを中心に作り方をまとめました。

石けんの作り方
製造方法作り方
鹸化法釜炊き法炊き込み法、煮沸法などとも呼ばれる。油脂とアルカリと水に熱を加えて反応を強制的に促進させながら水分を蒸発させる方法。できあがった石けん生地にはグリセリンが含まれるため、保湿力を持つ石けんができる。
塩析法釜炊き法で作られた石けん生地に食塩を加えて加熱撹拌後、静置すると上層に石けん生地、下層に食塩、グリセリン、不純物を含んだ水に分かれる。下層を除去した後、再び食塩を加え同じ作業を繰り返す。この作業を「塩析」と呼ぶ。塩析を繰り返すことで石けん生地の純度が増す。市販石けんで「純石けん分99%」などと書かれているものは、食塩とグリセリンと不純物が1%以下になるまで塩析を繰り返したもの。石けんの純度が高いので、溶け崩れしにくい、劣化しにくいなどの長所を持つ反面、ほとんどのグリセリンが除かれてしまうため保湿力に劣る。
冷却法コールドプロセスとも呼ばれる。油脂とアルカリと水を中温で短時間撹拌し、鹸化反応が安定して始まったら撹拌を中止し、石けん生地自身の力で鹸化が進むのを待つ。そのため、使用可能になるまで最低1ヶ月掛かる。保湿成分であるグリセリンを含んだ石けんができる。釜炊き法のように熱で水分を強制的にとばさないので溶け崩れしやすい石けんになる。
石けんが作られた時の条件が、出来上がりの石けんの質に現れやすい。
中和法油脂をあらかじめ脂肪酸とグリセリンに分解してから、得られた脂肪酸をアルカリで中和して石けんにする。アンモニアやアミンのような弱いアルカリでも石けんを作ることができる、油脂には存在しない脂肪酸の組み合わせで石けんを作ることができる、などの利点がある。石けんには残留グリセリンが含まれない。

結局、いい石けんはどれ?

石けんの個性を形作るものとして、油脂と添加物と作り方について簡単に記しましたが、

人の肌は千差万別です
。私には脱脂力が強すぎるので、オリーブオイル100%の石けんを使い続けることはできませんが、オリーブオイル100%の石けんを通年使い続けて、とても健康な肌を保っている方もいます。また、同じ人でも、環境の変化、食生活の変化、加齢などにより、肌の状態が変化し、合う石けんが変わることもあります。
今はたくさんの石けんが販売され、石けんについての情報もあふれるほどありますが、
一番いい石けんは、自分に合う石けん
です。あふれる情報の中から参考になるものを見つけて、それを手掛かりにいろいろな石けんを使い比べて、本当に合った石けんを探し出してください。
石けんは身体を清潔に保つための小さなかたまりにすぎませんが、本当に合った石けんを見つけた時、その石けんはお風呂の中で心地良い時間をもたらしてくれます。