「植物性の油脂は良くて、動物性の油脂は良くない」という言葉をよく耳にします。でも「良い」ってどういうことでしょうか?
「植物性の油脂は良い」と「動物性の油脂は良くない」という言葉だけが一人歩きしているような気もします。ということで、今回は植物性油脂と動物性油脂について考えてみました。
揚げ物をしたり、炒め物をしたり、ケーキの材料に使ったり、パンに塗ったり、食用として油脂はよく使われます。その時に使われる油脂は、紅花油、オリーブ油、パーム油、バターなど様々です。料理に合う風味を持った油脂を使ったり、健康を考えて使う油脂を選んだり、大量生産の食品の場合は価格の点から油脂を選択したりします。
動物性油脂は、家畜としての牛や豚から得られる牛脂やラード(豚脂)や、牛乳から作られるバターなどがあります。
身近なところでは、牛脂はすき焼きの時にあぶらとして使われたり、ラードはとんかつやポテトなどの揚げ物によく使われます。
動物性油脂の多くは常温で固体で、熱を加えないと液体にはなりません。これは、脂肪酸の構成による特徴で、
植物性油脂は、オリーブ油や紅花油、菜種油、胡麻油などたくさんあります。ほとんどが常温で液体の油脂で、これは飽和脂肪酸の割合が小さく、
C12:0 | C14:0 | C14:1 | C16:0 | C16:1 | C18:0 | C18:1 | C18:2 | C18:3 |
||
炭素数 | 12 | 14 | 14 | 16 | 16 | 18 | 18 | 18 | 18 | |
二重結合数 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 | 2 | 3 | |
動物性油脂 | 牛脂 | 0.1 | 3.3 | 0.2 | 25.5 | 3.4 | 21.6 | 38.7 | 2.2 | 0.6 |
ラード | 0.1 | 1.5 | 24.8 | 3.1 | 12.3 | 45.1 | 9.9 | 0.1 | ||
バター | 3.1 | 11.7 | 0.8 | 26.2 | 1.9 | 12.5 | 28.2 | 2.9 | 0.5 | |
植物性油脂 | オリーブ油 | 13.7 | 1.2 | 2.5 | 71.1 | 10.0 | 0.6 | |||
紅花油 | 0.1 | 5.5 | 0.1 | 2.2 | 79.7 | 12.0 | 0.2 | |||
菜種油 | 0.1 | 2.8 | 0.2 | 1.3 | 23.8 | 14.6 | 7.3 | |||
胡麻油 | 9.9 | 0.3 | 5.2 | 41.2 | 43.3 | 0.2 |
現在の食品の世界では、植物性油脂が動物性油脂よりもいいと言われています。その主な理由は下に挙げた通りです。
(2006年12月現在)
このような理由から、食品の世界では、(魚油を除いた)動物性油脂から植物性油脂(と魚油)への移行が進みつつあります。
身体の中に入れる油脂は植物性油脂を選択した方が身体に良さそうです。では、身体の表面に使う油脂はどうでしょうか?
身体に使うもので油脂を使ったものというと、石けん、乳液、クリーム、メイクアップ化粧品、シャンプーなどがあります。このようなものに使われる主な油脂はオリーブ油、ホホバ油、ひまし油、みつろう、カルナウバロウなどです。
石けんに限定してみると、ココナッツ油、パーム油、オリーブ油などが原料としてよく使われています。
以前は、石けんの原料として牛脂がよく使われていました。かつての一般的な浴用石けんは牛脂80%、ココナッツ油20%のものが多かったのです。これは、牛脂に多く含まれるステアリン酸が、石けんをしっかりと固める効果と泡保ちを良くする効果を持っていたことと、食肉として利用された残りを無駄なく利用できるという点からでした。
ですが、食べる油脂には植物性油脂がいいという情報が広まるにつれて、石けんにも植物性油脂が求められるようになってきたような気がします。「洗浄成分は100%植物性」という言葉を広告でもよく見かけますし、ドラッグストアに並ぶ洗剤や石けんのボトルにも「植物性成分100%」などの文字が並んでいます。
これは、植物性油脂が人間の肌に合うということ、ひいては、動物性油脂が人間の肌に合わないということでしょうか?
人間はほ乳類で、牛脂やラードをもたらしてくれる牛や豚もほ乳類。だったら、もしかすると同じほ乳類同士、人間と牛や豚の体脂の脂肪酸構成は近いのかも知れません。
さっそく、人間の皮脂の脂肪酸組成と、動物性油脂の代表として牛脂、植物性油脂の代表としてオリーブ油を比較してみます。
C12:0 | C14:0 | C14:1 | C16:0 | C16:1 | C18:0 | C18:1 | C18:2 | C18:3 |
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3 | 25 | 9 | 4 | 48 | 11 | ||||
牛脂 | 0.1 | 3.3 | 0.2 | 25.5 | 3.4 | 21.6 | 38.7 | 2.2 | 0.6 |
オリーブ油 | 13.7 | 1.2 | 2.5 | 71.1 | 10.0 | 0.6 |
人間の皮脂と牛脂の脂肪酸構成は、
ここまでの内容で、植物性油脂は人間の皮脂と脂肪酸構成が違うから良くない、と受け取られるかもしれません。
でも、動物性油脂に良いところがあるように、植物性油脂にも良いところがあります。
植物性油脂に多く含まれるオレイン酸には保湿力があり、また、植物性油脂のほとんどが常温で液体の油なので、液体の石けんやシャンプー、半液体の乳液やクリームの材料として欠かせません。
決して動物性油脂は人間の肌と相性が悪いものではなく、むしろ相性がいいものであると言えるでしょう。
もし、機会があれば、クリーム代わりに馬油やラードを使ってみる、動物性油脂の石けんを使ってみる、などしてみてください。
1月の石けん豆知識はお休みとさせて頂きます。
次の更新は2007年2月となります。