固形の石けんと液体の石けん、どちらが使い勝手がいいかと聞かれれば、液体石けんと答える人が多いのかもしれません。掃除用洗剤や台所洗剤、ボディーソープ、シャンプー、それらの全てが液体だという家庭が多いでしょう。
私もかつては家の中の洗剤が全て液体だったことがありました。今はトイレのみ液体石けんで、他は全て固形の石けんを使っています。
初めて固形石けんで食器洗いをしたときはすごく違和感がありました。固形石けんで食器を洗ったことがなかったので、なんだかやってはいけないことをしているような気がしたのです。今はすっかり慣れて、たまによその家で液体の洗剤を使うとすごく使いづらく感じます。(それよりも、石けんではなく洗剤を使うことにひどく抵抗を感じるのですが。)
固形の石けんと液体の石けんは、その見かけの他に、何がどのように違うのでしょうか?
固形石けんが出来るときの化学反応については「油脂が石けんに化ける反応」でも書いたのですが、ここで簡単におさらいします。
油脂と水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)が化学反応の結果、脂肪酸ナトリウムとグリセリンになります。この脂肪酸ナトリウムが「石けん」です。
油脂と水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)が反応して出来た石けんは、不透明で固さがあり、水の中に入れても全部が溶けるにはかなり日数がかかります。
固形石けん | 固形石けんに水を加えてすぐ | 3時間後、固形石けんはほとんど溶けていない |
水酸化ナトリウムは、化学式ではどちらもNaOHで基本的には同じものです。
"苛性ソーダ"と呼ばれる場合は主に工業用で純度は96%以上、"水酸化ナトリウム"と呼ばれる場合は試薬用で、日本薬局方規格品のとき純度は95%以上、JIS規格では96%以上となっています。
用途の違いで、化学式では同じものであっても呼び名が違うようです。
化学式 | 用途 | 純度 | |
苛性ソーダ | NaOH | 工業用 | <96% |
水酸化ナトリウム | NaOH | 試薬用 | <95%(日本薬局方規格) <96%(JIS規格) |
液体石けんが出来るときの化学反応式は、固形石けんが出来るときの化学反応式と同じです。ただ、一点違うのは、
油脂と水酸化カリウムが反応すると、すぐ、液体石けんが出来るのではなく、液体石けんの元が出来ます。この液体石けんの元は指で押すと簡単にへこむ位柔らかいペースト状です。ペースト状の液体石けんの元を水の中に入れておくと、一日程度ですべて水に溶け、液体石けんになります。
液体石けんの元 | 液体石けんの元に水を加えてすぐ | 3時間後、液体石けんの元が溶けて液体石けんになったところ |
液体石けんにはとろみはまったくありません。市販のボディーソープは適度なとろみがあって、ディスぺンサーを押すと手のひらの上にとろ〜んと出てきますが、液体石けんはディスペンサーを押すと、受ける手のひらにビシャッと当たってまわりに飛び散ってしまいます。ただの水をディスペンサーで出した時と同じ出方です。
今のところ、石けんの需要は液体石けんよりも固形石けんの方が圧倒的に多いのですが、固形石けんの需要は年々減少傾向にあるのに対し、液体石けんの需要は増加傾向にあります。固形石けんよりも液体石けんの方が受け入れられているようです。
液体石けんの方が使い勝手がいいとのことで、液体石けんを使う人もいますし、固形石けんと液体石けんを使い比べた時、液体石けんの方が少しきつめの使用感なので固形石けんを使うという人もいます。
固形石けんを使うか、液体石けんを使うかは、使う方の好みや用途によって選んでいるようです。
私自身の好みでは、だんぜん固形石けんです。
お風呂場で、使い込まれた石けんが水に濡れてつやつやと光っているのは、つくづく美しいと思いますし、乾燥した石けんを素手で持って匂いをかぐのも好きです。使うにつれてだんだん小さくなっていく石けんを「もうすぐなくなっちゃうな」と惜しみながら使うのも、なんだか趣きが感じられて良いのです。
時々、液体石けんで髪を洗いますが、使用感や洗い上がりの感じには全然問題ないのに、なんとなく物足りなさを感じます。
固形石けんでも液体石けんでも、使い心地は違いますし、さらに、どんな油脂から作られた固形石けんか、どんな油脂から作られた液体石けんかで、使い心地は違ってきます。ぜひ、いろんな石けんを使い比べてみてください。