「決して仲良くなれない関係」を「水と油」で表すように、実際の水と油もそのままではほとんど混ざり合うことはありません。ドレッシングの代表的な材料は「醤油、酢、砂糖、食用植物油、食塩」ですが、これらの材料をよく混ぜてドレッシングを作っても、醤油や酢のような水分と食用植物油の油分がはっきりと上下に分離します。
でも、マヨネーズが分離していないのはなんででしょう?マヨネーズの材料は主に「食用植物油、卵、酢、食塩、香辛料」です。ドレッシングと同様、油である食用植物油と水分である酢が材料なのに、ドレッシングのような分離している様子はありません。
マヨネーズには、油と水の間に入ってこの二つが分離しないようにするものが入っています。マヨネーズの材料である卵の卵黄に含まれるレシチンという物質は、油である食用植物油と水分である酢の間に存在することができ、油分の中に水分を溶け込ませたり、水分の中に油分を溶け込ませることができます。
レシチンのように
石けんもレシチン同様、界面活性剤です。
卵黄のレシチンは植物油と酢を混ざった状態にしてマヨネーズにしてますが、石けんは油汚れを水に馴染みやすくして、肌や衣類から油汚れをはがれやすくしています。
図1は
「石けんは合成界面活性剤ではない」という言葉を聞くことがありますが、それは違うと私は思っています。
石けんの界面活性剤である脂肪酸ナトリウムは、脂肪酸ナトリウム成分のある塊として土の中に埋まっていたり、脂肪酸ナトリウム成分を持った果実の状態で存在していて、それを人間が採集し、精製したりして得ているものではありません。
油脂と水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を化学的に反応させて、人間が作り出しているものです。人間が化学的な手段を利用して作り出しているもので、その点では合成洗剤に使われている合成界面活性剤と同じです。合成と天然、どちらかに分類するとしたら、石けんも合成界面活性剤だと思います。
ただ、石けんの場合、他の合成界面活性剤よりもずっと古くから使われていて、いわば全人類で長い時間をかけて安全性を確認してきた合成界面活性剤だと言えます。その点で、他の合成界面活性剤とははっきりと一線を画するものだと思います。
界面活性剤はほとんどの場合水に溶かして使うので、今まで研究され実用化されてきたのは水溶性の界面活性剤がほとんどです。その数は化学の進歩と共に増え、現在は何百種類もあります。
界面活性剤を分類する方法はいろいろありますが、現在最も広く利用されている分類方法は、イオン性で分類する方法です(図2)。
イオン性による分類というのは、水に溶けたときにイオン性を示すかどうか、イオン性を示す場合はイオンの種類で分類されます。
陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤は、どれも界面活性剤ではありますが、それぞれ性質が違うので利用方法も違います。
特徴 | 主な用途 | 代表的な界面活性剤 | |
洗浄、乳化、浸透、分散、可溶化などに優れている。利用される場面が多いので、他の界面活性剤より圧倒的に多くの種類がある。 | 洗浄剤、化粧品の乳化剤など。 石けんも陰イオン界面活性剤。 | 脂肪酸ナトリウム(石けん) ラウリル硫酸ナトリウム ラウレス硫酸ナトリウム ココイルグルタミン酸ナトリウム ココイルメチルアラニンナトリウム |
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陽イオン界面活性剤 | 界面活性剤本来の性質(洗浄、乳化、浸透、分散、可溶化、等)よりも、帯電防止作用、殺菌力に優れる。 陰イオン界面活性剤と併用すると不溶性沈殿物を生じるので、同時に配合されることはほとんどない。 | 特に、リンスやヘアコンディショニング剤、柔軟仕上げ剤に使われる。 | ステアルトリモニウムクロリド セトリモニウムクロリド |
両性界面活性剤 | 通常、アルカリ度が高い溶液中では陰イオンの性質を示し、酸度が高い溶液中では陽イオンの性質を示す。 洗浄力は陰イオン界面活性剤に劣るが皮膚や目に対する刺激が少ない。他にも、他の界面活性剤と併用できる、使用pH範囲が広い、殺菌性がよい、などの特徴もあるが、非常に価格が高いのであまり広く利用されてはいない。 | 殺菌剤、帯電防止剤、柔軟仕上げ剤、など | ココベタイン ラウロアンホ酢酸ナトリウム ココアンホ酢酸ナトリウム ラウリルヒドロキシスルタイン ラウラミドプロピルベタイン コカミドプロピルベタイン |
非イオン界面活性剤 | 非イオン界面活性剤自体には、界面活性剤本来の性質(洗浄、乳化、浸透、分散、可溶化、等)を示すことはほとんどないが、他の界面活性剤と併用することによって、他の界面活性剤の作用を強める働きがある。 | 洗浄補助剤、帯電防止剤、殺菌消毒剤、など | ラウラミドMEA ステアラミドMEA ラウラミドDEA オレアミドDEA |